Shopifyで卸売を始める際は、卸価格だけでなく、取引先の審査、最低注文金額、掛け払い、一般顧客への商品公開範囲まで整理する必要があります。Wholesale Gorillaは、こうしたB2B販売の機能を既存ストアへ追加できるアプリです。一方、現在はShopify標準B2BもBasicプランから利用できるため、アプリが必須とは限りません。本記事では、2026年10月時点の機能・料金と標準B2Bとの違いを整理し、自社に合う構成を選ぶポイントを解説します。
Shopify標準B2BとWholesale Gorillaの違い
標準B2BはBasic・Grow・Advancedでも利用できる

Shopify標準B2Bは、Basic・Grow・Advanced・Plusで利用できます。会社を表すCompanies、その支店や取引拠点を表すCompany Locationsに顧客を関連付け、法人単位で取引を管理する仕組みです。
販売商品と価格はCatalogsで管理します。商品・バリエーションの固定価格、価格の一括調整、数量別価格、最小・最大数量や増分のルールに対応します。支払条件を反映したB2Bチェックアウトや、B2Cとの同一ストア運営も可能です。
ただし、Basic・Grow・Advancedで割り当てられる有効なカタログは、B2Bマーケット全体で最大3つです。利用には新しいShopify Marketsが必要です。PlusではB2Bマーケットカタログ数のプラン上限がなくなり、会社・拠点への直接割り当ても使えます。デポジットや一部決済などもPlusの領域です。
Wholesale Gorillaは顧客タグを軸に卸販売を追加する

Wholesale Gorillaは、顧客タグと価格リストを結び付けて、卸顧客の価格や購入体験を切り替えるShopifyアプリです。価格リストに対応するタグを持つ顧客がログインすると、卸向けの条件で買い物できます。
会社・拠点を中心に設計する標準B2Bに対し、既存の顧客情報と商品を使って卸販売を追加する考え方です。アプリの価格リストはShopify標準のCatalogs/Price Listsと同じものではなく、標準カタログの上限を拡張する機能でもありません。
| 比較項目 | Shopify標準B2B | Wholesale Gorilla |
|---|---|---|
| 利用条件・費用 | Basic以上。機能差はShopifyプランによる | Plus必須ではない。Shopify料金にアプリ料金を追加 |
| 取引先管理 | 会社・拠点・担当者を関連付ける | 顧客タグと価格リストが基本 |
| 価格と商品 | カタログで管理。会社への直接割り当てはPlus | タグ別価格。商品公開制御はAdvanced以上 |
| 数量ルール・数量別価格 | Basic以上で対応 | 注文制限はAdvanced以上、数量別価格はPremium |
| 最低注文金額 | 数量ルールとは別に設計。PlusではCheckout Blocksも選択肢 | Advanced以上でカート小計の下限を設定 |
| 支払条件 | 会社・拠点に設定 | Net Termsと下書き注文を活用 |
| B2C併用 | 同一ストアで運営可能 | 専用ポータル、またはAdvanced以上のテーマ統合 |
標準機能で足りるかを先に整理し、必要に応じてアプリを比較しましょう。詳しくは、ShopifyのB2B・卸売ECでできることも参考にしてください。
Wholesale Gorillaでできることと制約
顧客別・商品別の卸価格と数量別価格
卸価格は、ストア全体・コレクション・商品・バリエーションを対象に、割引率または固定価格で設定できます。同じ価格リストのタグを複数顧客に付ければグループ価格になり、特定顧客だけに付ければ個別価格として運用できます。
例えば通常価格10,000円の商品に対し、取引先Aは7,000円、取引先Bは6,500円という設定が可能です。掛け率70%なら割引率は30%です。定価変更に連動させたい価格と、契約で固定した単価を分けると管理しやすくなります。
Premiumでは数量に応じた追加割引や固定単価も設定できます。ただし、数量別価格とカート小計による割引は卸顧客全体が対象です。「A社だけ10個以上で追加割引」といった要件を、通常のタグ別価格と同じ感覚で設計しないようにしましょう。
最低注文金額・数量とケース販売
Advanced以上では、カート小計の最低金額や、商品・バリエーション・コレクションの数量制限を設定できます。「最低注文金額50,000円」「商品Bは6個以上」など、受注条件をまとめる用途に使います。
注文制限は卸顧客共通で、カート画面に適用されます。手動作成する注文には適用されず、割引コードによって最低金額を下回る場合もあります。例外受注や割引後の判定まで含めて運用を決めましょう。
また、「最低10個」と「10個単位」は別の条件です。ケース販売では、卸専用の10個入り商品を作り、一般向けの単品商品と公開範囲を分ける方法があります。ただし、商品を複製しただけでは在庫は同期されません。単品とケースの換算、在庫更新、商品マスタの管理方法も必要です。
法人登録・承認と商品公開の制御
登録フォームから申請を受け、担当者が確認した顧客に価格リストのタグを付けることで、審査後に卸販売へ進めます。Premiumでは入力項目の追加や書類アップロードにも対応します。
- 法人・店舗から卸会員の申請を受け付ける。
- 担当者が取引条件や申請内容を確認する。
- 承認した顧客へ該当の価格リストタグを付与する。
- 顧客がログインし、卸向けの価格で注文する。
審査制の場合、申請直後に卸価格用タグを自動付与しない設計が重要です。新しい顧客アカウントでは、有効な価格リストタグが付くと卸アクセスが有効になります。既存のB2C顧客を卸へ切り替える場合は、重複登録より既存顧客へのタグ付与を基本にします。
Advanced以上では、一般顧客向けと卸向けで商品を出し分けられます。一般顧客から卸専用商品を隠すにはテーマ統合が必要です。Premiumでは顧客別の商品除外やページ・ストアのアクセス制限にも対応し、B2B専用の案内ページなどに活用できます。
同じ商品をB2CとB2Bで共用できますが、価格の切り替えと、商品そのものの非公開化は別設定です。商品ページだけでなく、検索結果や関連商品、ログアウト後のカートも含めて公開範囲を設計します。
決済・掛け払い・送料・税の役割分担
即時決済ではShopifyのチェックアウトを使い、ストアで有効にしたクレジットカードなどの決済方法で支払います。Wholesale Gorillaは卸カートから下書き注文を生成して価格などを反映するため、通常のB2C注文と同じ経路だと考えず、受注連携まで確認します。
Advanced以上のNet Termsは、対象顧客が先払いせず注文を送る仕組みです。Advancedでは下書き注文を確認し、支払条件の設定や請求処理を行います。Premiumには支払条件の自動化があります。Net 30などの期日を設定する運用と、日本の月末締め・翌月末払いの締め請求は分けて考えましょう。
掛け注文を受け付ける機能だけで、与信審査や代金回収まで完結するわけではありません。銀行振込などを使う場合は、請求書の発行、入金確認、消込、未払い時の対応を別途決めます。Shopifyで有効にした決済方法がB2Cにも表示される点にも注意が必要です。
送料はAdvanced以上で卸向けの条件を設定できます。例えば、一般向けの全国一律800円とは別に、卸注文は200,000円以上で送料無料とする設計です。地域・商品・配送便が複雑に組み合わさる場合は、Shopifyの配送設定や別アプリを含めて整理します。
税については、卸価格を税抜表示にする機能があります。登録した価格が税込か税抜かを正しく指定し、Shopify側の税設定とそろえます。価格表示の変更と免税設定は別です。B2CとB2Bで表示方法を変える場合も、注文時の税額と請求金額がつながるように設計してください。
Wholesale Gorillaの料金とプランの選び方

2026年10月6日時点のShopify App Store掲載料金は次のとおりです。米ドル建てで、Shopify本体の利用料金とは別に発生します。各プランに21日間の無料トライアルがあります。
| プラン | 月額 | 主な用途・機能 |
|---|---|---|
| Lite | 34.95米ドル | 専用卸ポータル、無制限の価格ルール・顧客価格グループ、基本登録フォーム |
| Advanced | 69.95米ドル | Liteに加え、テーマ統合、クイック注文、注文制限、卸送料、Net Terms、商品非表示 |
| Premium | 149.95米ドル | Advancedに加え、数量別価格、フォーム拡張、顧客別商品制御、支払条件の自動化 |
専用ポータルと価格設定から始めるならLite、既存のB2Cストアへ卸機能を組み込み、最低注文金額や送料も設定するならAdvancedが目安です。数量別価格や申請書類の収集が必要ならPremiumを検討します。
契約時には承認画面の請求条件も確認します。アプリ料金に加え、翻訳、テーマ調整、請求管理、外部システム連携に必要な費用を見積もりましょう。
導入方法とアパレル卸の設定例
価格リスト・登録・購入確認の順に進める
公式の初期設定ガイドは、価格ルールの作成、卸登録の設定、卸顧客としての購入確認という順序です。
- 要件をまとめる:取引先、単価、公開商品、最低金額、数量、支払条件、送料を一覧にする。
- アプリを追加する:Shopify App StoreのWholesale Gorillaで契約条件を確認し、必要なプランを選ぶ。
- 価格リストを作る:顧客グループ用タグと、対象商品・割引率または固定価格を設定する。
- 登録と審査を整える:登録フォーム、タグ付与の担当者、承認後の案内、ログイン導線を決める。
- 取引条件を設定する:注文制限、支払い、送料、税、商品の公開範囲を調整する。
- 販売画面を整える:専用ポータルかテーマ統合かを選び、必要に応じて顧客アカウントにアプリブロックを配置する。
- 注文の流れを確認して公開する:一般顧客・申請中・承認済みの各状態で表示と注文処理を確認する。
確認には、最低金額の直前・直後、数量不足、割引コード、送料の境界、税、未払い注文を含めます。Net Termsの下書きは在庫が自動確保される前提にせず、在庫予約の設定と予約期間を決めます。テーマ変更時にも卸カートへの導線を確認してください。
小売店へ卸売するアパレルブランドの例
一般販売価格10,000円の商品Aを、取引先Aへ6,000円で販売するケースです。以下の金額は説明用で、価格と小計の税込・税抜の基準は実際の設定で統一します。
| 要件 | 主な実現方法 |
|---|---|
| 取引先Aは6,000円 | 専用タグと固定価格の価格リスト |
| 商品Aは最低5個 | Advanced以上の数量制限。商品合計かバリエーション単位かを選ぶ |
| 最低注文金額50,000円 | Advanced以上のカート小計制限 |
| 請求書払い | Net Termsで受付。請求・入金管理はShopifyや会計側の運用と組み合わせる |
| 200,000円以上で送料無料 | Advanced以上の卸向け送料無料条件 |
最低5個を満たしても、6,000円×5個=30,000円なので最低注文金額には届きません。商品Aだけなら9個で54,000円となります。このように、数量と金額の両条件を同時に満たす必要があります。顧客別に最低金額を変えたい場合は、共通ルールでの運用から見直します。
向いている企業・別の構成を検討したい企業
Wholesale Gorillaが向いているのは、既存のB2Cストアに卸販売を追加し、顧客タグ単位で価格を管理したい企業です。小売店向けの卸売など、商品マスタを共有し、受注条件をある程度共通化できる運用と相性がよいでしょう。
一方、会社・拠点・担当者の関係を厳密に管理したい場合は、Shopify標準B2Bを先に検討します。多数の個別カタログが必要ならPlusを含めて比較します。複雑な承認フロー、EDI、基幹システム主導の価格計算が必要なら、連携開発や別のB2B基盤を含む構成が候補です。
注文数が少ない段階なら、Shopifyの下書き注文で見積もり・請求を行う方法もあります。反対にB2Cと商品・在庫・運営担当が大きく異なる場合は、卸専用ストアを分ける案も比較します。
移行時は、顧客コード、SKU、価格表の更新元、在庫の正本を決めます。ERPへ下書き注文と確定注文のどちらを渡すか、承認前に倉庫へ出荷指示が出ないかも重要です。
標準B2Bとアプリの選択や、複雑な卸売要件の整理に迷う場合は、ShopifyでのB2B・卸売EC構築についてファイブビットに相談することもできます。
よくある質問
Shopify Plusは必要ですか?
Wholesale Gorillaの利用にPlusは必須ではありません。標準B2BもBasic以上で利用できます。会社別カタログの直接割り当てや高度な決済要件など、必要機能からShopifyプランを選びます。
日本向けストアでも使えますか?日本語に対応していますか?
日本向けの卸売でも導入候補になります。Shopify App Storeの対応言語表記は英語です。顧客向けページには翻訳設定がありますが、管理画面の言語とは別です。国内運用では円表示、登録案内、税、請求書の運用をそろえることが大切です。
海外向け販売や複数通貨に対応できますか?
Shopify Marketsとの連携に対応しています。通貨・販売地域・税をShopify側で設定し、アプリの価格設定と合わせます。換算や端数処理で表示額が変わることもあるため、商品表示から決済まで一貫して確認します。
Shopify Flowで自動化できますか?
公式ガイドには、顧客へのタグ付与をきっかけにShopify Flowとメール機能で卸登録を案内する例があります。審査前の顧客に卸価格のタグが付かないよう、案内用と承認用のタグを分けて設計しましょう。
まとめ:価格だけでなく取引条件で選ぶ
Wholesale Gorillaは、顧客タグ別の卸価格、登録受付、注文制限などを既存ストアに追加したい企業の選択肢です。テーマ統合や掛け注文はAdvanced以上、数量別価格などはPremiumが目安になります。一方、標準B2BもBasicから使えるため、会社・拠点管理やカタログの条件に照らして比較することが大切です。価格表だけでなく、審査、請求、送料、税、在庫まで整理し、日々の運用を無理なく続けられる構成を選びましょう。
※この記事は2026年10月時点の内容です。今後のアップデートやShopifyの仕様変更等により、記事の内容が古くなってしまう可能性があります。


